アベロックス勉強会

以下、プロの方向けに箇条書き。
アベロックス。一般名モキシフロキサシン。略号MFLX。
ア(オーダリング等でなるべく先頭に表示されるように)+velocity(迅速な効果発現)+クス(塩野義製薬が好む接尾語)
肺炎球菌に対する高い抗菌活性と肺組織への高い移行性を有するレスペラトリーキノロン
DMに対するしばりがないため、重症例においてGFLXからの代替薬剤の役割を担う。


適応は呼吸器系、耳鼻科系、皮膚科系であり、泌尿器系には適応にならない。*1
呼吸器及び耳鼻科系には早く、強力な効果を示す。
皮膚科系にも強い作用を示すが、深在性皮膚感染には他剤より若干劣るため第1選択とはせず、CFPNなどで無効な症例について2nd choiceとして用いる。


肝・腎疾患による用量調節は不要であるが、高齢者ではSEが出やすいため60歳以上を目安に半量に減らして投与。
吸収早く作用が強力であるため、吐き戻してしまった場合でも再投与は不要。
半減期も13hrと長めであり、透析では除去できないためover doseした場合は活性炭で吸着除去。
Fe/Mg/Alとはキレートを形成するため同時服用を避ける。
Caに対してはそれほど影響しないとのこと。


AUC/MIC依存(濃度依存)であり、1×大量投与が有効。
肺炎球菌に対するAUC/MIC値は約500であり、GFLXの74.4、LVFXの20.0、CPFXの4.4などと比べるとその作用の強力さは明らか。
ちなみにAUC/MIC値は≧40でG(+)治療域、≧100で耐性菌の発現を抑制でき、≧125でG(-)の治療にも用いることができるとのこと。


SEとしては抗生剤ではおなじみのショック、下痢、腹痛の他に悪心やふらつきが多い。
これは髄液移行性が高いためで、髄膜炎への効果が高いかわりに中枢性のSEが増えた結果である*2とのこと。
また、QT延長があるため低K血症患者には禁忌、classⅠA/Ⅲ抗不整脈薬とは併用禁忌とされているが、その延長幅はおよそ6msとのことで、これは寝返りを打つだけでも変動するような値なんだとか。
発現率もLVFXと大差なく、0.000051%程度。
ニューキノロンでおなじみの光線過敏症は構造式中の第7位にメトキシ基を挿入することで発症率が下がっている。
1錠中に68mgの乳糖を含有しているが、これはよほど重度の乳糖不耐症でなければ無視してかまわない*3とのこと。


ヒートから出して常温で6ヶ月、さらに半錠に分割しても1ヶ月は安定であることが確認されている。
ただし、半減期を長くするよう製剤設計されていること及び強い苦味のため粉砕投与は△。

*1:泌尿器感染症はLVFXで十分な治療が可能であり、無用な耐性菌出現を防ぐため。

*2:GABAには作用しない

*3:健常人が1日に分解できる乳糖の量は25gであるため、乳糖分解能力が1/400まで低下しないと影響してこない。