ガンコロリン

今年33冊目。

ガンコロリン

ガンコロリン

実に海堂さんらしい、現実のテーマを上手に織り込んだ短編集。
個人的に一番面白かったのは最初の健康増進モデル事業。
黄金地球儀のようなはっちゃけ方をしてます。
海堂さん楽しんで書いてるなー、と。

  • 健康増進モデル事業

厚生労働省によって無作為に抽出された主人公を、人工的な治療以外のありとあらゆる手段を用いて日本一の健康優良成人にしようというお話。
オチがお見事。

  • 緑白樹の下で

ブラックペアンで出てきた渡海先生がノルガ共和国にいた時のお話。モルフェウスで出てた涼子さんが勉強を教えてもらったってのもこの話の絡みだよね。
医療後進地域でのマラリア対策と、内戦地帯からの重症患者搬送のお話として単体でも読めるけど、やっぱり上記2作を読んだ上で読むと海堂ワールドのつながりを感じるよね。

  • ガンコロリン

抗生剤と耐性菌の話がベース。
薬剤の適正使用って難しい、という現実のお話をさらに外科領域にまで拡げて一般人にも分かりやすくしたのはさすが。

  • 被災地の空へ

東北で起きた大地震にDMATの一員として速水先生が派遣される話。
医師の仕事は救命だけではない。看取りも大事な仕事なのだ。
これは東日本大震災の時に実際言われてた話で、そこに立ち向かう医師としてぐっちーではなく速水先生を選んだところに大きな意味があるよね。

遺体―震災、津波の果てに

遺体―震災、津波の果てに

その現実のお話としては、この本を読むといい…と言っているオイラも一冊全部は読んでないんだけどね。
機会があったら買って読もうとは思ってる。

  • ランクA病院の愉悦

これはTPPと混合診療解禁の話だよね。
当然かなり極端に書いてはいるけれども、これに近い事態にはなり得るだろうね。
そうなったらおしまいかと言えば、案外そういうものだと割り切ることができるかもしれないよ?なんて、医療従事者側からは思ってしまう。
日本の医療は(軽症の)患者負担が軽すぎるのが大きな問題の一つだと思うわけで、そうした状況の改善にこの話みたいなランク分けはひょっとしたら…