サインバルタ勉強会

セロトニン/ノルアドレナリン療法の再取り込み阻害剤(SNRI)
世界101カ国で承認、抗うつ剤としての売り上げ世界一
20mg/日→40mg/日→60mg/日と漸増、いずれも1×投与
動物実験でどちらかといえば覚醒的作用があったため臨床試験は1×朝N投与で実施→添付文書も1×朝Nで適応が設定されている
添付文書通りの用法で最大用量まで漸増投与→6週治療終了後にHAM-D17合計評点減少量がプラセボに対して有意、パキシルとは有意差なし(効果発現は約2週〜)
主な改善項目は抑うつ気分、仕事と活動、入眠障害、罪業感、精神的不安
継続的寛解率もプラセボに対して有意、パキシルとは有意差なし、52週にわたって効果継続
主な副作用は悪心、傾眠だが、2週目以降激減する(傾眠が問題となる場合、服用初期のみ1×夕N投与する場合もあるが、そうでなければ1×朝の方がコンプライアンスの向上が見込める)。用量依存性はないようで、増量時の副作用発現は多くない
MAO阻害剤とは併用禁忌
代謝(CYP1A2及び2D6)のため重度肝機能障害は禁忌

  • 抗うつ作用

脳内セロトニン欠乏→緊張、焦燥
脳内ノルアドレナリン欠乏→意欲の低下、興味の消失
両方が関与→不安、気分・情動・思考・認知機能の低下
サインバルタはどちらも改善する
クロミプラミン(TCA)と同等、セルトラリン(SSRI)と比べてノルアドレナリン阻害作用が強力、ミルナシプラン(SNRI)と比べるとどちらの阻害作用も強力
臨床的効果の目安となるセロトニントランスポーター占有率>80%には、サインバルタ>40mgで到達する。ジェイゾロフトでは>50mg、パキシルでは>20mgでそれぞれ80%到達。トレドミン100mg、デプロメール50mgでは同80%には到達しない

  • 疼痛抑制作用

高血糖持続によって末梢の神経線維が損傷、障害すると異常インパルスが発生して上向性疼痛伝導系により脳に伝導され、痛みとして認識される。脳で痛みを認識すると、下降性疼痛抑制系が作動してセロトニン神経、ノルアドレナリン神経を介してインパルスが脊髄後角に伝わる。インパルスが脊髄後角に伝わると、下降性神経終末よりセロトニンノルアドレナリンが放出される。一次ニューロンからはサブスタンスPやグルタミン酸などの神経伝達物質が放出され、二次ニューロンの受容体に結合する。下降性神経終末にはセロトニントランスポーター、ノルアドレナリントランスポーターが存在する。放出されたセロトニンノルアドレナリンがトランスポーターへ再取り込みが行われると、シナプス間隙のセロトニンノルアドレナリン濃度が減少する結果、サブスタンスPやグルタミン酸などの神経伝達物質が増加するため痛みが発生する
サインバルタはこのセロトニン/ノルアドレナリン再取り込みを抑制することで下降性疼痛抑制系を賦活化し、鎮痛効果を発揮すると考えられている
疼痛抑制作用はリリカと同等
疼痛抑制に用いる場合、20mg/日で効果発現することも多い
服用終了すれば疼痛は再度発現すると思われる