高血圧治療の過去。現在。未来。

第三部は高血圧治療の第一人者、福岡大学の荒川名誉教授。
演題は「高血圧治療の過去・現在・未来」
こちらもなかなか面白かったです。
高血圧などという疾患がそれほど認知されていなかったルーズベルト大統領の時代、収縮期血圧200を超えていたルーズベルト大統領に施された処方はジギタリスコデインフェノバルビタールであり、わずかでも血圧を下げたのはフェノバルビタールによる鎮静作用だけであった*1という話に始まり、血圧上昇の主犯はアンギオテンシンではなく食塩であるという持論を展開。
無塩食を用いた試験では、95%で降圧、心退縮が観察でき、タンパク尿や心肥大の発症率は、食塩摂取量に比例するという。*2
したがってAⅡ*3の働きを阻害する現在の治療法は原因療法ではなく対症療法であり、服用を中止すれば、またすぐに血圧は上昇してしまうのも当然である。
となれば血圧上昇の原因である食塩の摂取量を減らすのが妥当であり、そのための方策として現在、脱塩利尿薬*4の改善*5が行われているという。
将来的には人工甘味料ならぬ人工塩味料の開発が行われないものかというユニークな提案もなされていました。

*1:結局彼は血圧300に達し、脳出血でこの世を去った

*2:ただし無塩食による降圧効果発現には最低でも1ヶ月、平均で5ヶ月を要し、巷の多数の論文のように2〜3週の観察で「無塩食による降圧作用は期待できない」とするのは論外であるらしい。

*3:AngiotensinⅡ

*4:現在の利尿薬はNa除去作用が急激に発現しすぎであり、代償的にレニン−アンギオテンシン系の亢進を招くため、降圧作用は大きくない。

*5:利尿薬の徐放化、ARBと利尿薬の合剤など