ベルソムラの乱

間もなく薬価収載予定の新規作用機序睡眠薬スボレキサント(商品名:ベルソムラ)。*1
覚醒を司るオレキシン受容体を競合阻害することで覚醒しにくくする=眠りやすくする薬。
BZ系と異なり依存性を持たないこと、持越しもなく自然な睡眠を実現する薬だというのがMSDの売り文句。


ところがこれにちょっと待ったコールがかかってTwitter上でちょっとした祭りになってます。
米FDAにおいて同薬の申請がなされた際、有意差こそないものの希死念慮リスクと眠気の持越しが増大傾向にあり、安全性が懸念されて20〜40mg/回の申請用量に対して5〜10mg/回が推奨とされたとのこと。
にもかかわらず、国内では15〜20mg/回での服用開始用量が承認され、5〜10mgへの減量オプションはなし、錠剤の割線もないとのこと。
また、このことが国内では精神科医にも薬剤師にも伝達されていないことが問題視されております。


で、ちょっと調べてみたらCYP3A4による代謝が大きく寄与していて、CAMなどCYP3Aを強く阻害する薬とは併用禁忌なんだってね。
依存性についてもヒトでの試験結果は存在せず、用量を上げるとひょっとして…という話もある。
ロゼレムが発売された時に武田のMRにも言ったんだけど、こういう薬を一般開業医に販売開始直後からプロモーションするのはマジでやめてほしい。
こういう薬はまず睡眠専門医に処方を開始してもらって、効果と副作用、その対応をきちんと確立させてから一般開業医に広げるべきだとおもう。
特に製薬会社が狙っている患者数の多い開業医なんて、その分一人当たりの診察時間が極めて短いから、睡眠状況の把握なんてロクにされてないところがほとんどだよ?
「20時に飲んでも23時くらいまで全然眠気がこない」とか「21時に眠るんだけど4時くらいに目が覚めちゃう」なんて言ってる老人が単純に「眠れない」と言って睡眠薬をホイホイ出されているケースなんてざらだよ?
結局そうやって適当な使い方が横行した結果、せっかくの新薬に「使えない薬」なんていう残念な印象がついちゃうのは本当に残念。
急がば回れ」っていう観念は大事だと思うんだけどなぁ。