武士道セブンティーン

今年52冊目。

武士道セブンティーン (文春文庫)

武士道セブンティーン (文春文庫)

「香織絡みのエピソードは基本的にインパクト強いから、大体覚えてるよ。子供の頃、お父さんみたいに強くなるためにはお酒が必要だって、日本酒一気飲みして救急車で運ばれたことも、映画で見たみたいに、日本刀で自動車が斬れるのか試してみたくて、お父さんの模造刀を勝手に持ち出して、国道の真ん中に仁王立ちして警察に保護されたことも、ちゃんと覚えてる」(p.270)

相変わらず香織ちゃんはほとばしってますね。
2年生になって後輩ができても、香織ちゃんは香織ちゃん。
一方の早苗ちゃんは転校先の剣道部の雰囲気が、東松と、自分の剣道と、違いすぎてお気楽不動心が揺らいでます。
セブンティーンではこのスポーツ剣道と武道としての剣道の違いに悩む早苗ちゃんが中心。
コーチからの理不尽な扱いや、剣道に対する根本的な部分での想いが異なる友人との付き合いなどで悩みまくる早苗ちゃん。
彼女がこれを乗り越えていくまでの心理描写が、辛いところも嬉しいところもしっかり描かれている。
基本が悩みなので重たい雰囲気になりがちだったりするんだけど、その合間合間に描かれる香織ちゃんのシーンでは抜粋部分のように爽やかな笑いがあったりして沈んだ作品にならずにすんでいる。
それでいて香織ちゃんのシーンはただのコメディシーンではなく、やはりこちらも武士道とはなんぞやという早苗ちゃんのシーンと同一のテーマに向かっているので、全体のバランスもとれている。
シックスティーン同様にとっても面白かったです。これは間違いなく今年のベスト3に入ってくるだろうなー。