ホルモー六景

nohmin2013-03-30

今年30冊目。

ホルモー六景 (角川文庫)

ホルモー六景 (角川文庫)

定子の目に一瞬悲しそうな表情が浮かんだが、すぐさま覚悟を決めた顔で視線を前に向けた。
一条の前で、定子は大きく息を吸いこむと、とびっきりのおっさんボイスで号令を発した。
「ぐああいっぎりうえぇッ」
オニたちは、武器を手に掲げ、嘶くように"絞り"をふるふるとさせると、怒涛の勢いで土手を駆け下りた。
六月二十四日、午後八時四十三分。
長きにわたるホルモーの歴史上、誰もその存在を知らない、「鴨川(小)ホルモー」の火蓋は切って落とされた。
(p.51)

鴨川ホルモーのスピンオフ短篇×6本。
どの作品にもホルモーと恋愛が絡んでいるが、話の中に占めるそれらの比率が様々に変えてあるし、主人公も現役だったりOB/OGだったり、ホルモーとは無縁の人だったりして、6話全ての読み味が全然違うのに、やっぱり鴨川ホルモーの雰囲気は残しているのはお見事。
個人的には1話目の京産大玄武組二人静の、女の戦いと友情を描いた話が一番面白かった。
流しそうめんマシーンの変貌と、当然のように最も悲惨なタイミングで始まるホルモーシーンが見所。
4話目はその1話目と同じ時間軸で微妙に交錯しているし、2話目と一緒に本編の大事な裏側ともなっている。
また5話目ではホルモーが京都だけのものではなく、東京には東京のホルモーが存在することが描かれ、そうであるならばきっと全国にそれぞれの形のホルモーがあるような、ホルモー世界の広がりを感じさせてくれる。
3話目では毎年のホルモー開戦を告げる時計の起源が、6話目では「ホルモオオオォォォーッ」っと叫んだことが発端となる(?)400年以上の時を隔てた文通の話が描かれていて、まさに色とりどりの全6話。