中田英寿 誇り

今年125冊目。

中田英寿 誇り (幻冬舎文庫)

中田英寿 誇り (幻冬舎文庫)

ブラジルに1−4で敗れ、中田が試合終了後にブラジルDFのルシオと交換したユニフォームに顔をうずめたまま長い間ピッチで仰向けになったまま動けなかったW杯ドイツ大会。
ジーコ監督の下、出場メンバーはほぼ固定されていたにもかかわらずチーム内の不和が報じられ、中田不要論まで飛び交っていたあの頃、中田は何を思い、自らの引退までに残された時間を戦っていたのか。
前作「鼓動」のその後を綴った一作。


相変わらず中田はは自らの高い理想と周囲の環境や諸々のタイミングのギャップに苦しめられたようだ。
俺と一緒にされては中田が怒ってしまうかもしれないが、なんとなく自分とダブついてしまう部分が少なくなく、辛いというか残念というか。
自らに課すハードルが周囲の水準と比べて高い場合、自らに厳しいことは特に問題はないが、そのハードルを周囲にも課してしまうとやはり色々な問題が生じる。
ここで妥協すれば自らの孤立やチームの不和は避けられるのであろうが、それは逃げであって、結局は自分を含めて全体を低クォリティに押しとどめる結果となってしまう。
かといって強硬に周囲にも厳しく当たればチーム全体が崩壊する。
やはり理想は周囲をどうにかこうにかモチベートして全体を押し上げることなんだが、これが並大抵のことではない。
自分に対してあれだけストイックで、一個人としては十分に大成した中田であっても、そのことがうまくいかず、大きなストレスとなっていたようだ。
他人をモチベートすることってほんとに難しいと、改めて思い知らされた。