巨人たちの星
今年116冊目。
- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1983/05/27
- メディア: 文庫
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「いったい、知識とは何でしょう?」彼女は問いかけた。「物事の表面を撫でるだけでなく、願望の眼鏡をとおして物を観るのでもなく、現実をあるがままに受け取ってその本質を捉える真の知識とは何でしょう?事実と虚偽、真実と神話、現実と幻影を正しく識別する有効手段として確立された唯一の思考形態は何でしょうか?」彼女は呼吸を計って一段と声を張り上げた。「それは科学です!」
(p.321)
うむ、この傲岸な科学至上主義こそこの3部作の芯ですな。
この思考に基づき、あくまで推論と検証に基づいて展開される、まさにこれぞScience Fiction。
3作目となる今巻ではその対象が社会学にまで広がった。
p.262〜270やp.300〜301でカレン・ヘラーとダンチェッカーが討論しているシーンがその象徴。
特に後者こそがこの巻のキモになるわけですね。
「自然界はたしかに複雑怪奇ではあっても、決して不正直ではありませんでしょ、先生。故意に偽られた証拠や、事実をひた隠しに隠そうとする相手にてこずったことがおありかしら?
「わたしたち法律家は、実験を繰り返す贅沢は許されません。犯罪者が条件を一定に保った実験室で同じ罪を犯すということはまずありませんから。それだけに、わたしたちは最初の判断が肝心なのです」
(p.301)
この発言を境に今度は社会学の手法でもってジェヴレンの陰謀に挑んでいくことに。
そこまでは良かったんだけど、ちょっと敵対勢力の設定が甘すぎたなぁというのが実感。
ジェヴレン側はもう何万年にもわたり地球人を監視していた。それどころかその謀略によって歴史を裏側からコントロールしていたにも関わらず、化かし合いに対する準備がなさすぎる。
地球人がパッと閃いて勢いで起こした行動一つで何万年にも渡り準備、実行されてきた計画が破たんするというのはどうだろうか?
ちょっとご都合主義が過ぎて興醒めしてしまう、ハリウッド映画のような印象を受けた。
1作目の「星を継ぐ者」のような、最後の最後でどんでん返しが起こるような良作ではなかったなぁ。
- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1980/05/23
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