ゲームの名は誘拐 読了

今年55冊目。

ゲームの名は誘拐 (光文社文庫)

ゲームの名は誘拐 (光文社文庫)

ラスト70ページの展開はさすが東野圭吾。迫力のある展開です。
それまでとはうってかわって登場人物の素のままのオーラというか、力量を感じさせる表現。
こいつらがゲームをやりあったのなら、そりゃこういう結末になるよと納得させられる。
以下、ネタバレ含む。

佐久間氏のやり方は奇抜で短期的には注目を集めるかもしれないが、長期的な視野というものに欠けている。単純でわかりやすくはあるが、人の心の動きを読むということができない。
(p.17)

葛城副社長との対決にあたって、どこかでゲームに破綻をきたし、そしてその決定的な敗因に上のセリフがからんでくるものだと思っていた。
しかしそうではなかった。結局佐久間の敗因は純粋に葛城副社長との能力の差だった。

パパに言わせれば、そういう勝負時での直感力と決断力があるかどうかで、成功する人間とそうじゃない人間に分かれるんだって
(p.319)
優秀な人間というのはそういうものだ。知らず知らずのうちに自分を補強する材料を入手しているものなんだ。そういう感覚は教えても身に付かない
(p.330)

これは間違いなく現実世界でも真実であるように思う。
そして佐久間と葛城との差はこういう力の差だった。いわゆる器の差というヤツ。
だがそれでも佐久間は人並以上の器をもっていることを葛城に示してみせた。
きっと佐久間はこの後、葛城のよきパートナーとして仕事ができるのではないか。
そうすることで佐久間の器はより広がり、やがて葛城をしのぐ存在になれる。そんな気がした。