薬局 1月号 読了

薬関係8冊目。

薬局 2012年 01月号 [雑誌]

薬局 2012年 01月号 [雑誌]

特集:Evidence Update 2012
いろんな分野で去年1年間に構築されたEvidenceをざっくり紹介。
これはためになる特集。毎年12月*1は特集をこれで決めればいいのにと思う。

  • 肥満を伴う空腹時高血糖の患者に対して、試験で設定されるような本格的な介入は現実的でないことが多いが、医師、看護師、薬剤師、保険師などが連携し、常日頃から意識的に患者のライフスタイルに介入することがよりよい結果をもたらす可能性がある。
  • 高血圧、脂質異常症を伴う日本人の肝動脈狭窄患者に対して、強化治療(BP<120/80mmHg、LDL-C<100mg/dL)を行うと、むしろ心血管イベントが増加傾向*2
  • TIA既往の患者において平均収縮期血圧に比べて、visit-to-visit血圧変動幅が大きいほど、脳卒中の発症リスクが高い。*3アムロジピンはアテノロールと比べて、visit-to-visit血圧変動が有意に低い。この血圧変動幅はCa拮抗薬が最も強く、利尿薬(ループ利尿薬は除く)がその次に低下させる。逆にARB、ACE-i、さらにβ遮断薬が最も強く増加させる。
  • 血圧が正常であってもCVDの2次予防には降圧療法が有効。
  • バルサルタンとアムロジピンは心・脳血管イベントなどの予防効果は同等であるが、左室肥大や交感神経活性、尿中微量アルブミンにおいては、アムロジピンに比してバルサルタンが心腎の保護作用に優れている。*4
  • 最大用量のACE-iを用いても十分な降圧や蛋白尿のコントロールが得られない場合には、最大量のARBを追加しても効果はわずかであり、塩分摂取の十分な制限によって血圧及び尿蛋白の改善といった腎保護効果が期待できる。RA系阻害薬は血圧を食塩感受性にしてしまうため、食塩摂取量の多い状態では十分な降圧効果を発揮できなくなる。
  • ARB心筋梗塞のリスクを増やしはしないが、減らしもしない。*5
  • 腎臓のアウトカム改善を図ろうとする場合、蛋白尿は必ずしも良い指標とはならない可能性がある。*6
  • 発症約8年来の糖尿病患者で最も死亡リスクが低かったのは、内服薬治療群でHbA1C(NGSP値)7.0〜9.0%、インスリン治療群で7.5〜8.0%だった。
  • チアゾリジン系薬ではプラセボを対照群として心不全、全ての肺炎または下気道感染症、体重増加、浮腫が有意に多い。
  • ピオグリタゾン治療後に体重増加(1%)がみられた人よりも、体重減少(1%)がみられた人の方が総死亡が多くなっていた。*7
  • プラバスタチン+食事療法により冠動脈疾患既往のない脂質異常症患者の冠動脈疾患発症が、食事療法単独群に比べて33%有意に低下。*8ただし、日本人における1次予防におけるイベント発症率は欧米に比べ、極めて低いため、費用対効果に関する懸念はある。
  • ジェネリックスタチンを用いても低リスク患者の冠動脈疾患1次予防における費用対効果を証明することが出来なかった。費用対効果を上げるためには、スタチン治療の服薬アドヒアランスを上げることが重要である。
  • スタチン投与により、その効果を上回るようながん増加の危険は、現時点では小さい。しかし、心筋梗塞の危険が小さい日本人や1次予防の場合には、その効果が小さいために、ある個別の癌のリスク増加が利益を上回る危険も否定できず、低リスク者を含む無差別なスタチン投与は現時点でも慎むべき。
  • 心血管イベント既往のある患者において、アスピリン継続群と比較して、中止群では、非致死性心筋梗塞単独のリスクが増加していた。
  • 初発の心筋梗塞後のアスピリン治療患者において、PPI併用は更なる心血管イベントのリスク増加に関連する可能性がある。
  • COPDにおいて中等症患者の方が重症患者より閉塞性障害進行は早く、その抑制に薬剤介入(チオトロピウム)が有効*9
  • チオトロピウム・レスピマットで死亡率が高まるのではないかという報告がなされているが、チオトロピウム・ハンディヘラーでは死亡率は有意に低いとされており、チオトロピウムそのものの影響は否定的。レスピマットとハンディヘラーでチオトロピウムの血中濃度は変わらない。現在、COPD患者を対象に、両剤形の24ヶ月吸入投与した際の有効性と安全性を検討するランダム二重盲検、実薬対照、並行群間試験が進行中。
  • 吸入ステロイド使用患者に対し、チオトロピウム追加は吸入ステロイド倍量投与より有意に優れ、サルメテロール追加に劣らない。
  • インダカテロールは中等症以上のCOPDに対してサルメテロールより優れ、チオトロピウムとほぼ同等の効果がある。
  • 軽症喘息に対するロイコトリエン受容体拮抗薬は吸入ステロイド薬と同等相当の効果を有する。
  • コントロール良好な小児喘息患者に短時間作用型β刺激薬+吸入ステロイド薬の頓用は有用である。
  • 使用期間が短くても心血管系イベントを起こさないNSAIDはなく、心筋梗塞の既往のある患者では、使用期間の長短に関わらず、使用に関しては限定的であるべき。
  • NSAIDの長期服用により、がん、およびアルツハイマー病の発症リスクが大きく低下する。
  • 感染症診療においてステロイドはどちらかというと御法度的存在であったが、今後は少しずつその見方は変わってくるかもしれない。
  • 更年期障害に対する加味逍遥散の効果はHRTに比して総合的効果に有意差はない。
  • ビスホスホネート薬による大腿骨頸部骨折リスクの抑制効果は、骨折の既往のある患者においてビスホスホネート薬の投与開始から2〜3年目にみられ、それ以降は頭打ちになる。3年目以降は異形骨折が増加することから、大腿骨骨折全体で考えると3〜4年目でメリットが相殺され、5年目以降では逆に骨折のリスクが増すことになる。したがって、ビスホスホネート薬は投与開始3年で中止した方がよい。
  • PPIは徐々にアレンドロネートの効果を打ち消して骨折を増やしていく。制酸薬の使用は、骨折のリスク以外に肺炎のリスクも上げることが示されており、不必要な制酸薬の安易な使用は厳に慎むべき。

それぞれのエビデンスについての詳しい適用条件は本誌を購入の上で原著をあたってください、と逃げておくのは忘れない。

*1:1月ではなく12月なのは、総目次がついてる12月号は購入すると便利なため。

*2:JCADII

*3:UK transient ischemic attack aspirin試験

*4:VART試験

*5:GISSI-AF研究

*6:ORIENT

*7:PROactive study

*8:MEGA study

*9:UPLIFT研究