クスリとリスク

>oliveさん
浜六郎に触れてほしくない理由としてメリットとデメリットの話を挙げました。
治療法にはどんなものであれ「メリット=期待できる治療効果」と「デメリット=副作用、コストetc」があり、両者を天秤にかけてその治療法を選択するかどうか考えます。
浜六郎はそのデメリットを過剰に誇張します。
言うなればデメリット側を強く押さえつけた天秤で判断を強いられるような状態です。
きちんとした知識を持って彼の話を聞くのであれば、彼の言う危険性はきちんと認識できます。*1
ただ、医学/薬学的知識のない一般の方にその判断は無理だと思いますので、彼のような極端な主張に踊らされてほしくないのです。
そして同様に、副作用が全くない薬というものは世の中に一切存在しません。
いい例があるので引用します。
2005年にオーストラリアの科学ジャーナリスト、カール・クルシャルニツキという人が書いた記事です。

この物質(一酸化二水素=DHMO)は、さまざまなガン細胞のなかに見出されている。だが、この物質の存在と、この物質の隠れ家となっているガンとのあいだに何か因果関係があるという証拠は得られていない――少なくとも、これまでのところは。しかし、いくつか驚くべき数字はある――DHMOは、致死的な子宮頸がんの九十五パーセント以上に見出され、末期ガンの患者から集められたガン細胞の八十五パーセント以上に見出されているのだ。それにもかかわらず、この物質は今も、工業用の溶剤や冷却材として用いられ、引火を遅らせたり、引火を抑えたりするために利用され、さらには生物兵器化学兵器の製造や、原子力発電所でも使われている。そしてあろうことか、持久力を要するスポーツにおいて、エリート・スポーツマンがこの物質を摂取しているのだ。運動選手は、DHMOを摂取せずにはいられないこと、やめれば死に至ることを知っている。医学的には、この物質は、発汗、嘔吐、下痢などの症状を呈する病気には、ほとんどつねに関係している。DHMOがかくも危険な物質である理由のひとつは、背景に溶け込んで見えなくなるカメレオンのような性質をもち、さらにはその状態を変えることができるからだ。個体のときは重い火傷を引き起こすこともあり、高温ガスの状態では、年間数百人もの人々を死に至らしめている。そして液体状態のDHMOを少量肺に吸入したというだけで、毎年何千人もの人たちが命を落としているのだ。

どうですか?
DHMO禁止請願の署名へ協力をお願いされたらサインしますか?
実のところDHMO=一酸化二水素とはH2O、つまりただの水のことです。
どんな物質であれ体の中に入る以上は何がしかの副作用をもたらす可能性はあるということです。
その最悪の事態だけを不必要に恐れていては何もできないのです。
吸入ステロイドを用いた喘息治療に関する私の意見は前述のとおりです。
メリットは喘息による呼吸苦の減少、デメリットは局所性副作用=嗄声など、そして治療費です。
私自身が喘息患者であればシムビコートやアドエアの吸入治療を選択するでしょう。
もし納得がいかないようであれば他の薬剤師さんや医師の意見もよく聞いて、その上で判断されるのがよろしいかと思います。

*1:別に彼は嘘を言っているわけではないので。ちなみにそれぞれの医薬品の添付文書(=公式の説明書)もネットで読むことができますが、同じ理由で専門家以外には正しく読めません。