代替医療のトリック 読了

今年58冊目。

代替医療のトリック

代替医療のトリック

サイモン・シンに何があった?
フェルマーの最終定理」や「暗号解読」、「ビッグバン宇宙論」では数学や物理学の発達に関わる様々な人々の人間ドラマを絡めて上手に見せてくれたのに、本作にはそういうドラマは控えめ。
「科学的根拠はない」が何度も何度も繰り返されるその様*1は、読んでいてサイモン・シンが顔を真っ赤にして執筆している状況を思い起こさせる。
ところどころに共著のエツァート・エルンストの宣伝が顔を出す有様を目にすると、共著者の選択を誤ったのではないかと思わせる。
本作は著者の4冊目にして初めて自分の専門分野の本だったので期待していただけに残念。
でもp.425でデトックスについて述べたこの分はウマイこと言った!

代替医療においてデトックスが用いられる背景には、人体の生理学、代謝学、毒物学などに関する誤解がある。デトックスに何らかの効果があるとの根拠はなく、キレーションセラピーや結腸洗浄といった療法を使えば有害にもなる。患者から除去されていくのは、たいていお金だけだろう。

ちなみにこの本の第3章ではホメオパシーについて酷評がなされているが、これによって英国ホメパチ団体からサイモン・シンが訴えられたらしい。
ただそれによって現在の日本と同じように、英国でもホメオパシー叩きが一気に活発化したというんだからサイモン・シンの人気は凄まじい。
次回作では元通り、人間ドラマをふんだんに盛り込んだ作品が著されることを期待します。

*1:あまりに科学マンセーで書かれている本なので、常に批判的に文章を見る練習にはよかったのかもしれないが。