トラクリア勉強会

先日採用、明日初処方予定のオーファンドラッグ、トラクリア錠の勉強会をアクテリオンのMRさんにやってもらった。
でらマッハの講義でついていくのが大変だったけど、なんとかまとめてみる。

肺動脈性肺高血圧症(PAH)
肺動脈が何らかの原因で狭窄することで右心に負荷がかかり、肺動脈圧上昇を経て右心肥大、右心不全から死に至る。
肺高血圧症は発症機序別に1-1〜5-4に分類(ダナポイント分類)され、ボセンタン(トラクリア)錠は1.肺動脈性肺高血圧症に適応となっている。
肺高血圧症の重症度分類はNYHAの心機能分類を準用し、ClassI〜ClassIV分類、平均余命はClassI・IIで4.9年、ClassIIIで2.6年、ClassIVで半年と進行性の肺癌並に予後が悪い。トラクリア錠はClassIII・IVに適応となっている。
PAHでは内皮細胞に発現しているET-B受容体が減少し、平滑筋細胞のET-B受容体が増加することで血管収縮、細胞増殖、細胞肥大が促進される。トラクリア錠はET-AおよびET-B受容体を阻害することでPAHの症状を改善する。
PAHにはこのエンドセリン経路の他に、NO経路とプロスタサイクリン経路を介した病態が存在するとされ、それぞれシルデナフィル(レバチオ)錠やベラプロスト(ドルナー)錠が経口投与されている。これら3経路の治療薬は併用されることが多い。


ラクリア錠
肝機能障害が発現する為警告(中等度以上の肝障害患者には禁忌)となっている。ASTおよびALTが基準値上限の3倍を超えたら減量、8倍を超えたら中止を検討する。この肝機能値異常は比較的急速に発現するが、早期に対処すれば可逆的であるため定期的な血液検査が必要。肝機能障害発現のメカニズムとしてはBSEP(Bile salt export pump)阻害による胆汁うっ滞が原因であるとする説がある(BSEP仮説)
動物実験で催奇形性が認められたため妊婦に禁忌。粉砕、半割時はマスク等着用推奨。男性は…?
CYP3A4誘導作用のためシクロスポリン、タクロリムスと併用禁忌
肝機能異常発現リスク↑のためグリベンクラミドと併用禁忌。他のDM治療薬はn.p.
通常2T/2Xから投与開始し、4T/2Xへ漸増。3T/日の場合は2X(不均等)と3Xのどちらにすべきかはデータがない。どちらでも保険上の返戻実績もないとのこと。
BW≦40kgでは減量考慮。
ODP、粉砕OK