いえろーれたー

皆様ご存知の通り、タミフルさんに緊急安全性情報が出ました。

10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。

ということで、原則禁忌の項目に上がってはいないものの、ほぼそれに準ずる処置といってよいでしょう。
因果関係がはっきりしていないものを警告として通知し、使用を差し止めることは異例中の異例でありますが、そんなことをしなくても報道によってタミフルのイメージはずたずたにされており、それによってリレンザ*1を今シーズンから採用している病院が大半となりました。
まぁそれはさておき、インフルエンザに罹患した場合、取り得る治療手段は主に以下の3通りになります。

そしてその結果異常行動、突然死などを起こすパターンとしては以下のものがありますわね。

etc...

それぞれがインフルエンザ患者全体から見てどの程度の頻度で起きているのか比較検討している論文をオイラは読んだことがないので実際問題どの選択肢がハイリスクなのかは知らないのです。
お役所的に添付文書等を資料として書いてしまうと、全て「0.1%未満」あるいは「頻度不明」となります。
現実問題としては「薬を使うとインフルエンザが1〜2日早く治るけども副作用を起こす可能性が0.1%未満ではありますが増加します。薬を使わなければ症状は1〜2日長く続くし、熱せん妄やインフルエンザ脳症、同肺炎のリスクが上昇するかもしれませんが、薬による副作用は出ません。さてどちらがよいですか?」という選択肢になると思います。
いずれを選んだとしても家族がとる対策は同じで「ゆっくり休養させ、罹患1〜3日目はできるだけ目を離さずこまめに観察する」ということになります。
以上のことを医師・薬剤師がきちんと説明して、最終的には患者(あるいはその家族)がメリット/デメリットをきちんと判断してインフォームドチョイスを実行する*2というのが理想的なんでしょうね。
くれぐれも薬害タミフル脳症被害者の会にも厚生労働省にも踊らされすぎることなく、双方の主張を取り入れた判断を各個人がなさいますよう、一薬剤師のお願いであります。
なお、医師・薬剤師はその判断をお手伝いはさせていただきますので、遠慮なくご相談くださいませ。

*1:現在の保険診療においてタミフル以外では唯一のインフルエンザ治療薬。
   厳密にはシンメトレルもインフルエンザに対する承認を取得していますが、耐性菌の発現率が異様に高く、ほとんど効かないといってよい状態。
   他には感冒薬や漢方薬による対症療法がありますが、これはまた別の話ですね。

*2:ちなみに私自身が罹患した場合はタミフル飲んで寝ることを選択します。