100倍分量の投与で新生児死亡、薬剤師2人書類送検

東北大病院(仙台市青葉区)で2003年、入院中の新生児に100倍の分量の薬剤を誤って投与し、死亡させたとして、宮城県警台北署は16日、調剤を行った女性薬剤師(27)(青森県弘前市)と、調剤の監査担当だった女性薬剤師(40)(仙台市太白区)を、業務上過失致死の疑いで仙台地検書類送検した。

同署は「当事者の過失が大きい」として、病院の管理責任は問わない方針。

調べによると、調剤担当の薬剤師は03年2月19日、重度の呼吸不全で入院中だった男児(生後20日)に投与する気管支拡張剤「テオフィリン」を処方する際、「(1日あたり)3・5ミリ・グラム」をグラムに換算する際に誤り、「0・35グラム」で調剤した疑い。監査担当の薬剤師は誤りを見過ごし、注意義務を怠った疑い。
読売新聞

はい、責任の所在をどうこう言うのも興味がないし、確認はしっかりしようねと言ったところでこの手のミスが減るわけでもなし、ここは一つ、現場の人間らしくどうしてこういうミスが起きるかを暴露しておきましょう。


まずテオフィリンってのは体重1kgあたり4〜8mg/日くらいの分量で用いられます。*1
今回のケースでは新生児とのことですので体重は約3kg。
そうすると3.5mg/日という処方量はかなり少なめになりますが、新生児ということで通常の小児用量よりも少量で用いていたのでしょう。
気づいた方がいるかもしれませんが、3.5mgというのは成分量なのです。
通常テオフィリンを粉薬として販売する際には、そのままでは少量過ぎてきちんと量り取れないために添加物を加えてかさ増ししてあります。
例えばテオドールドライシロップであれば成分量は20%、すなわち5倍量にしてあるわけです。
つまり製剤量での処方量は通常1kgあたり0.02〜0.04g/日です。
そうすると0.35g/日というのは、大体10〜20kgくらいの子供に投与する1日量になるわけです。
で、今回ミスを起こしてしまった薬剤師さんは恐らく、成分(=テオフィリン)量で書かれた処方を製剤(=テオドールドライシロップ20%)量で計算しようとしてしまったのではないでしょうか。
これが何を意味するかって、0.35g/日ってのは、いつもよく量る分量なんですよ。
だから一目見て「おかしい」という認識が働きにくくなってます。
だからといって新生児であることを見落としても仕方がないなんてことはもちろんないわけですが、こういったミスはオイラ達も決して他人事ではないわけです。


小児の散剤を監査するときは必ず体重換算と年齢の突合せ*2をお忘れなく、というお話。

*1:添付文書上では4〜8mg/回となっているが、最近は2〜4mg/回でよいというのが主流。ちなみにテオフィリンは1日2回飲むお薬ですよ。

*2:今回のケースでも、これを行って初めて「新生児なのに体重が10kg?おかしい!」ということに気づく。