WFとGFJ

# pharmacist 『MRに確認したところワーファリンとグレイプジュースの相互作用に関して報告は無いそうです。薬理学的には起こりうる可能性は否定できませんが過去に症例の無いものを全国放送のゴールデンで放送する意義について疑問を感じます。それよりもっと啓蒙すべき事があるでしょう。』

○ グレープフルーツジュース
× グレイプジュース
id:pharmacistさんに限らず、薬学出身者なら誰でもミスであることにはすぐ気づくでしょうが、それ以外の方が誤解するといけないのでとりあえず訂正から。


さてWF*1は、小腸において主にCYP2C9によって代謝され、ごく一部がCYP3A4による代謝を受ける。*2
一方GFJ*3はCYP3A4を阻害する*4ことが知られている。
従ってGFJによるWFの代謝阻害による出血傾向の増大の可能性は大きくないといえる。
このため、この件について症例報告をMRに確認しても信憑性ある回答は得られないと考えるべきである。
なぜなら、元々0.1%以下でしか発生しない副作用がGFJによって微妙に増大したところで、それは誤差範囲であってGFJの影響を証明できないからであり、報告がないのが当たり前だからである。


などというのは揚げ足取りなわけですが、どちらにせよこんなものを全国放送で放送する意義がないというid:pharmacistさんの意見には異論をさしはさむ余地がありません。
副作用に関して報道する限り、どうしてもある程度脅迫みたいな構成になるのは仕方ないかもしれませんが、その扱いにくいテーマを選んで番組を作る以上、ワイドショーのような低俗なノリではなく、NHKのようなノリで真剣に作って欲しいものです。

*1:ワーファリン。血液凝固阻害剤。一般名ワルファリンカリウム
血液をサラサラにして、心臓や脳の血管が詰まるのを予防するのに用いる。

*2:ワーファリン錠の添付文書より

*3:グレープフルーツジュース。薬剤師国家試験ではこの略語が突如出てくる。

*4:同時にP糖蛋白による排泄も阻害することが報告されている。
また、GFJはCYP3A4を阻害するのみならず、CYP3A4を消失させてしまうことも報告されており、消失したCYP3A4が元に戻るまで3〜5日かかるという。このためGFJに関しては、単に薬と一緒に飲まなければよいというものではなく、薬を飲んでいる間は一切飲まないことが好ましい。