友なる船

今年51冊目。

友なる船―「歌う船」シリーズ (創元SF文庫)

友なる船―「歌う船」シリーズ (創元SF文庫)

小さな暴君を野放しにしておけば、大きな暴君に育つだけ。(p.336)

新米ブレーンが潔癖の倫理観を持つブローンとコンビを組み、華族の坊ちゃんたちの悪事を捜査する過程で現実は白と黒だけではないということを学び成長していくお話。
相変わらず伝説化されているヘルヴァだけでなく、前作の主人公シメオンもゲスト出演。
シメオンの時もステーション内に放たれたワームと戦っていたけれど、今回もコンピュータウィルスとの戦いで窮地に陥ってます。
ただそこで、外界情報を遮断された時に自我を保つ技術としてヨガで培った精神修養が役に立つってのが人間らしくて、ウィルスに侵されているコンピュータ部分との両立がブレインシップの特性をうまく描いているなぁと思った。
敵のボス役であるポリオン君については抜粋したミカヤ将軍のセリフの通り。
今は小物だけれども大きな暴君に育つ器であることがこれまた上手に描かれています。
登場人物それぞれの視点から描いたシーンが頻繁に入れ替わるんだけど、それぞれが影響しあって変わっていくのがよく分かります。
第1作とも前作とも、また別の切り口で描かれているのにしっかり世界観が共有されていて、ほんとに大したもんだと今回も思いましたとさ。