マルドゥックスクランブル

今年13、15、17冊目。

なぜ、私なの?―賭博師シェルの奸計により、少女娼婦バロットの叫びは爆炎のなかに消えた。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にしてネズミ型万能兵器のウフコックだった。高度な電子干渉能力を得て蘇生したバロットはシェルの犯罪を追うが、その眼前に敵方の担当官ボイルドが立ち塞がる。それは、かつてウフコックを濫用し、殺戮のかぎりを尽くした男だった…弾丸のごとき激情が炸裂するシリーズ全3巻発動。

これはね、ものすごく面白かった。
「ばいばい、アース」と同様長い。3巻合わせて1100ページ以上あるけれども、前作よりも間口が広くとってあって、スピード感も緊迫感もしっかりした世界観もある。
SFで、アクションもので、カジノのバクチがメイン(2巻解説より引用)の話だが、アクションシーンとカジノのシーンのギャップがすげぇ。
アクションシーンは基本えぐい。全身おっぱいのデブとか、足が吹き飛ばされても重力操作で問題なく走ってくる戦闘狂とか。
カジノのシーンはスロットに始まってポーカーでのイカサマ合戦、ルーレットでの真剣勝負ときて最後はブラックジャックで3連戦。
特にブラックジャック1戦目の終盤、小さな隙を少しずつ広げて、それまで客を自分の思うままに誘導していたディーラーをどんどん崩壊させていくくだりが面白かった。

<<ねえ、叔父さん。このカードの絵、可愛いと思わない?>>
「ふむ。わかるよ、君好みのカードだ」<<もう一枚のカードと、よく似合ってる。あんまり崩したくない感じがする>>
そこで、ウフコックの指示が来た。
『だから』<<だから、ヒット>>
(3巻p.72)

ディーラーに向かって、千ドルチップを一枚、掲げてみせた。<<全部一ドルに替えたいの>>
ディーラーもドクターも、時間が止まったようにバロットを見つめた。<<そうすれば、このチップだけで、千回掛けられる>>
ディーラーよりも先に、ドクターのほうが先に大きく息を吐いて蘇生し、わめいた。
「それじゃ、勝負にならないよ」
バロットはむっとほほを膨らませてみせた。自分でもなかなか上手いと思った。多分、ウフコックと出会ってからできるようになったことの一つだった。
「リスクを背負ってこその賭けなんだから。それはカジノの趣旨じゃないよ。頼むから、幾ら残っているかというんじゃなくて、幾ら勝ったかという勝負にしてくれないか」<<わかった。じゃあ、沢山勝つ>>
(3巻p.82-83)

<<私、他の席に行きたいな>><<じゃあ、もう少しだけ、ここで勝とうかな>><<ここはもういいから、もっと素敵な男がいるところに連れてって>>
(3巻p.94,95,97)