空色パンデミック 4

今年58冊目。

空色パンデミック4 (ファミ通文庫)

空色パンデミック4 (ファミ通文庫)

最近、仲西景の様子がおかしいことに俺、青井晴は気づいていた。穂高結衣の発作に巻き込まれ続けた仲西は、自らも「現空混在症」という病に蝕まれていたんだ。幻聴や己の中の別人格に悩まされ、現実と空想の狭間で苦しみ、やがて恋人の結衣の存在すら忘却してしまった…。結衣は失意の中で、それでも仲西を救う方法を探している。そして俺もまた、あいつを救うために、ある「芝居」を計画したんだ―。狂騒と純真の「ボーイ、ミーツ、空想少女」終幕。

今までの空想に巻き込まれて振り回されるお話とは一変して、主人公自身が現実と空想の境目をなくしてしまった状態で物語は進行する。
周囲の人間の視点が頻繁に入ってくるからとりあえず現実の話の進行具合は分かるのだけど、景君パートでの現実と空想の入り混じりっぷりはお見事。
空想とは何か?現実とは何か?およそラノベらしからぬ重苦しい雰囲気の中で景君が自分という存在を取り戻していく最終巻。
最終巻だというのに結衣さんの空気っぷりはかわいそうだが、冒頭の発作のシーンはやっぱり面白い。空パンはこうでなくっちゃ。

「女将、この松茸はどこで採られたものだ?」
結衣さんはしめじを指差して、女将さんに傲慢な態度で尋ねた。
「京都の丹波産です」
結衣さんは腕を組んで感服しながら、
「なるほど、やはり風味が違うな」と女将さんを誉めて、「して、この真鯛の刺身は?」と尋ねた。
「当然、瀬戸内で獲れた天然ものです」
鰹のたたきを盛り付けた皿に手を添えて、女将さんは答えた。もうなんでもありだ。
(p.38)