M城大学卒後講座2

1コマ目「緩和医療における薬剤師の役割と実践」
演題通りの内容で、特に鎮痛剤の使い方について。

  • μ1受容体とμ2受容体というのを学生時代に教わっていたが、現在では2種類の存在というのは否定的見解が多くなっているらしい。μ受容体の遺伝子は1種類のみが確認されており、オピオイドの結合位置の違いが2種類の受容体と考えられてきた可能性もあるとのこと。
  • ペンタゾシンとブプレノルフィンはμオピオイド受容体の部分アゴニストで、強オピオイドの作用と競合的拮抗を生じる為併用しないこと。WHOの3段階ラダーには含まれていない。天井効果あり。
  • トラマドールは弱オピオイド鎮痛薬で、便秘にはなりにくいが痙攣発作に注意。他のオピオイド同様に(特に投与初期の)吐き気対策が必要。鎮痛補助薬の作用点と同じであることから、神経障害性疼痛にも有効である可能性あり。
  • モルヒネは肝代謝を受けて生成するM6Gが強力な鎮痛作用を持つが、腎障害時にはこのM6Gが蓄積することで鎮静、呼吸抑制が起きやすくなる。MSコンチンは食事の影響を受けないが、ピーガードは投与後1時間以内に食事をとると血中濃度が低下する。
  • がん患者の皮膚乾燥は皮脂ではなく水分の不足により生じているため、貼付剤使用時には皮膚の水分保持が重要。
  • オピオイドを適量使用した場合には依存性や呼吸抑制等のSEは生じないとされているが、逆にオピオイド使用中に神経ブロック等により急激に疼痛が除去された場合は突然オピオイド過量となり呼吸抑制等のSEが発現する場合がある。これは痛みのあるときには脳内ドパミン神経の活動を押さえるκ神経系が亢進してμ神経系を抑制しているためとされている。神経ブロックによりκ神経系が抑制されるとμ神経系の抑制が解除される。
  • オピオイドによる嘔気にはオランザピンが有効
  • フェンタニルの増量で効果が不十分となり、μ受容体のダウンレギュレーションを考慮してモルヒネに変更した場合、ある程度の期間をおくとダウンレギュレーションが解除される→再度フェンタニルに戻すと以前より少量で十分な効果が得られることがある=換算比が使えない
  • メサドン→「他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度〜高度の疼痛を伴う各種癌」に対して「処方可能医師として登録された医師」のみが処方でき「調剤責任薬剤師として登録された薬剤師のいる薬局」に限り調剤できる。鎮痛のみならず「オピオイド等依存における解毒及び維持」に効果、μオピオイド受容体への親和性が高く強い鎮痛作用、活性代謝物の産生が少なく腎機能低下患者にも使用できる、鎮痛耐性が形成されにくいといったメリットの半面、他のオピオイドとの交叉耐性が不完全なため等価換算比が確立していない、血中消失半減期47時間と長い、血中濃度のピークに個人差が大きい、CYP3A4/2B6等多くのCYPで代謝を受けるため相互作用が多い、QT延長が15%に生じるなど、使用が難しい。半減期が2日もあるくせに臨床試験が3×でなされたため、添付文書上の用法は3×となっている。1×や隔日投与でも効果を発揮できるかどうかについてはデータがない。
  • 非小細胞肺がん患者に対して早期から緩和ケア介入を行うと、癌症状は変わらないものの、QOLや精神状態を向上し、生存期間も延長するという試験結果もあり、できるだけ早期からの緩和ケア介入が望ましい。
  • 麻薬を携帯して出国する場合、大体1週間前に申請すれば間に合うようであるが、相手国により様々な対応が必要とされる場合があり、在日大使館に前もって問い合わせておくのが望ましい。

2コマ目「放射線被爆の影響を正しく理解するために−放射線事故の教訓から−」
放射能放射線の違いを懐中電灯と明かりの違いに例えるなどしてもらって復習。
人工放射線による生体への影響は50mSv/y以下(=生涯線量1Sv以下)なら生体に与える影響は無視できるとされている。
正しい知識に基づき「放射線はわずかでも恐ろしい」という意識を変える必要がある→パニック、ストレス等の健康被害風評被害の予防