M大卒後講座1

1コマ目は精神科で有名な尾崎先生のご講演。
いきなり冒頭から大学が講演前に流していたビデオに「あのビデオはまずい」と訂正から入るという荒業(゚∀゚)
講義の中身は演題に沿っていて、なおかつ分かりやすかった。

・妥当性の承認(validation)…「なるほど」「無理もない」と治療者が思えること。「共感」は難しい。ひとまずvalidationを目標にする。
・予期不安…発作後も「また発作が起こるのではないか」という不安
・広場恐怖…予期不安から派生する回避行動で、パニック発作が生じても助けを求めることができない状況やすぐに逃げ出すことのできな場所*1を避け、行動範囲が狭まってしまうこと。「広場が怖い」という意味ではない。
・「不安をなくすこと」を治療目標にしないこと!現実的に「不安を持ちながらやれそうなこと」の目標を立てる。
・BZは急性効果で不安は消える→少しだけ残った不安に対しても「BZで消したい」と思うようになる→BZの常用量依存、乱用による奇異反応につながる
・「夢」とは深睡眠時に行われる記憶の整理であると言われており、入眠困難や反復的な悪夢などを主症状とするPTSDは、記憶の整理が困難になる疾患であるとも言える。
・外傷後急性期にグループでPTSD体験を語り合う心理的デブリーフィングではPTSDの予防や社会的機能の改善は示されず、症状悪化も報告されており、行ってはならない。
強迫性障害は「自分の手が汚れているのではないか」などといった「汚れ」、「鍵をかけ忘れたのではないか」などといった「チェッキング」、「机の上の物を同じ方向にしておかないといけない」といった「秩序性」への強迫観念が強く、自分でもバカバカしいとは思っているが、誤った考えが繰り返し頭に浮かび、止めようと思うと不安になり自分の意志ではどうにもならない状態。SSRIが圧倒的に有効。
・程度の差はあれ「汚れ」も「チェッキング」も「秩序性」も90%の正常者が体験していることを伝える「ノーマライジング」が有効。侵入指向を抑え込むのではなく「まあ、大丈夫だろう」と対処する。
・薬の副作用としてのQT延長は三環系、四環系の全てで起こる。SSRIは基本的にnp。MARTA、SDAも大丈夫。オーラップは危険*2セレネースも注意。心疾患、低K、低Mg、PD、甲状腺↓、DM等でリスク↑

2コマ目はこれまた睡眠障害分野で有名な塩見先生の講義。
こちらも大変分かりやすかった。

・過眠→不登校、不眠→うつ、SAS→循環器疾患/車の事故、RLS→イライラ/不眠、RBD→睡眠中のけが、CRSD→リズム障害
不眠症の鑑別診断の手順として、不眠+食欲↓+興味↓でうつ。SAS、RLS、ナルコレプシー、RBD、リズム障害を鑑別してなお原因不明のものを不眠症とする。
・うつ→1コマ目の通りに治療、SASCPAP、RLS→ビ・シフロールor抑肝散、ナルコ→モダフィニル、RBD→リボトリール、リズム障害→ロゼレム*3
原発性不眠は慢性不眠と偽不眠に分類。偽不眠は就寝時間がおかしい*4。積極的に遅寝早起きにする。眠剤は22時半頃服用し、23時ごろに就寝する。20時なんかに服用しても効かない(睡眠制限療法)
SASの夜間頻尿=心房の陰圧→hANP↑→夜間尿量↑ CPAPで心房が陰圧になるのを抑えればすぐに治せる
SAS→低酸素血症→血液濃くなる→固まり、詰まりやすくなる→脳梗塞心筋梗塞
・イライラして眠れない→RLSを疑う。D2受容体遮断薬が特効する。
・夢を見て暴れる、寝床で暴れる(RBD)→レビー小体型認知症、PDにも移行する。脳波診断が可能。早期診断が大切。
・タバコは睡眠科的には覚せい剤。集中力が増すともいう→喫煙の背後に不眠あり
SASの喫煙者はCPAP入れた翌日から禁煙可

  • 睡眠の約束

・眠る時間を決めること。日曜の朝が危険。ちょっと寝不足なくらいでないと翌日眠れない。
・最後に食事をする時間を決めること。夕食後はカフェインを摂らない。
・どうしても睡眠リズムを一定にできない場合、せめて「必ず眠っている時間」を決める=夜更かしの制限
・6時間は眠ること

質疑応答では塩見先生に「眠剤の特性を全く理解していないヤブ処方が記載された処方箋を受け取った時、調剤薬局の薬剤師はどうすべきか」と質問したんだけど、先生には全く質問の意図を理解してもらえなかったのか、全然歯車の合っていないお答えしかいただけなかったのが残念。
ほんとに多いんだよ、「短時間型=弱い眠剤」「長時間型=強い眠剤」としか認識してない医者とか偽不眠に全く気付かないで眠剤処方する医者。疑義照会してもラチがあかないから困る。

*1:新幹線などの公共交通機関、エレベータなどの閉鎖空間、美容院などの束縛状況、高速道路の渋滞など

*2:CYP3A4阻害によるオーラップのAUC↑も注意

*3:1/4Tをvds5時間に服用。1T服用するとリズム相前進作用がなくなり催眠作用しか出ない

*4:高齢者によくある。することがないからと夜8時に布団に入っていたりする。寝られるわけがない。寝られても夜中には目が覚めてしまう