十二国記 月の影 影の海

今年88冊目。

――で?あなたは」
陽子はにらんだが、男を威圧することはできなかった。
「俺は小松尚隆という」
まったくかまえる様子を見せずに答えた男を、陽子はまじまじと見返した。
「……海客?」
「胎果だな。ショウリュウと音に読む者が多い。多いといってもたかがしれているが」
「……で?」
「で?」
「あなたは何者?台輔の護衛かなにか?」
ああ、と男は笑った。
(pp.166-167)

あとがきで筆者自身が述べている通り、ひたすらに暗い暗い上巻を読みきり、荒みきってしまった陽子と一緒にはいずるようにして下巻を読んでいき、引用部分まで読むといきなり雲が晴れる!
そういうことだったのかと一気にたたまれる風呂敷。
立ち直り、決意し、前に進みだす陽子を見守りながらさっぱりとした読後感で読了。この上巻と下巻のギャップはすげぇな。
ただ、楽俊がイイ奴すぎるのだけは気になった。