ぬしさまへ 読了
今年69冊目。
- 作者: 畠中恵
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/11/26
- メディア: 文庫
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仁吉に恋文を出した小間物問屋の一人娘が殺された!乱筆の恋文に隠された真相を暴く「ぬしさまへ」
栄吉の饅頭を食べて亡くなった小金持ちが、人生最後に挑んだ博打の結果は?「栄吉の菓子」
若旦那の義兄、松之助の周りで起きた連続犬猫殺しを巡って人の心の中に棲む闇を描く「空のビードロ」
夜な夜なすすり泣く布団の正体は?「四布の布団」
千年にも及ぶ仁吉の片想いの相手とは?「仁吉の思い人」
誰かの夢の中に閉じ込められた若旦那が、自分一人で妖と立ち向かう決心をする「虹を見し事」
バリエーションに富んだ内容で、話ごとに題材や緊迫感は全く異なるのに、ちゃんと「しゃばけ」してる。
妖が全く出てこないビードロや、若旦那の出てこないビードロ&思い人も、ちゃんと他の話と同じ空気感を共有できているのがすごい。
私は…私は本当に、もっと大人になりたい。凄いばかりのことは出来ずとも、せめて誰かの心の声を聞き逃さないように
(p.311)
最後の話で妖達抜きでも妖に立ち向かう決心をした若旦那がどんどん成長していく姿を見て「かっこいい」ではなく「頑張れ頑張れ」と思ってしまうのは「大人になりたい」という憧れをいつの間にか抱かなくなってしまった自分ゆえか、それとも病弱な若旦那を見守る手代達と同じ心境なのか。さてどっちだろう…