ラブ・ケミストリー 読了

今年68冊目。

ラブ・ケミストリー

ラブ・ケミストリー

実験台の端に目をやると、溶媒が入った褐色瓶が並べてあるのが見える。
前衛的なバーのディスプレイに見えなくもないが、中身は酢酸エチル、ヘキサン、クロロホルムメタノールトルエンなどである。どれを取っても、普通に暮らせば一生触れることのない液体だが、僕にとってはもう水と変わりない。
(p.39)

理系草食系男子の一目惚れ。恋か化学か二者択一を迫られた彼の決断は!?
有機化学系研究室の空気があまりにリアルすぎ*1て、そこに主人公の特殊能力やら死神やらという異分子が多少入り込んできても違和感がない。
脇を固める登場人物達もキャラがたっててサクサク話が進む。
各章の合間にダイアローグが入ってきて話の裏側が少しずつ描かれるのだが、カロンさんの依頼主が一体誰なのか想像しながら読み進めるのも楽しい。しかもまさかの大どんでん返しで、オイラの予想はいい意味で完全に裏切られました。
蛇足ですが、本のタイトルって大事なんですね。本書の原題は「有機をもって恋をせよ」だったそうで「このタイトルだったら買わなかったなー」と妻ちゃんと意見が一致しました。編集さん、いい仕事したね。

*1:これ書いた人絶対こっち系の人だろ!と思ったら、東大薬学部卒で製薬会社勤務。ほんとにバリバリこっち系の人だった。納得。