医薬品のネット販売訴訟一次判決

薬のネット販売規制は合憲 東京地裁判決


昨年6月の改正薬事法施行に伴い、一般用医薬品(大衆薬)のネット販売を厚生労働省令で規制したのは違憲だとして、ネット通販会社2社が国にネット販売できる権利の確認を求めた訴訟の判決で、東京地裁(岩井伸晃裁判長)は30日、「健康被害を防止するための規制として必要性と合理性が認められる」として、請求を棄却した。
省令の無効や取り消しの請求は却下した。
ただ、岩井裁判長は「副作用に関する消費者の意識や、情報通信技術に変化が生じた場合、規制内容を見直すことが法の趣旨に合致する。今回の規制が恒久的に固定化されるべきという判決ではない」と付言。状況の変化に応じ、柔軟に規制内容を見直すよう促した。
訴えていたのは医薬品・健康食品のインターネット通販会社「ケンコーコム」(東京・港)と「ウェルネット」(横浜市)。
岩井裁判長は判決理由で「対面販売では薬剤師らが購入者の顔色や体格などを見たり、やり取りするなどして状態を的確に把握できるが、ネットでは困難」と指摘。ネット販売で副作用による健康被害を実効的に防ぐことは難しいとして、規制を合憲と結論づけた。
厚労省は昨年の改正省令で、副作用のリスクが比較的高い風邪薬や胃薬など第1類と第2類の医薬品を原則として店頭での対面販売とし、リスクが最も低いビタミン剤など第3類のみネット販売を可能とした。
日本経済新聞

いわゆる「1類・2類OTC薬のネット販売規制」について「改正薬事法は合憲ですよ」という判決。
ケンコーコムの全面敗訴ですね。
これについてケンコーコムからコメントも出てます。

今回の法令は、日本薬剤師会や日本チェーンドラッグストア協会といった守旧勢力が、医薬品のネット販売をつぶしたいと官僚や族議員に働きかけ、9千以上の消費者からの反対のパブリックコメントを踏みにじって、施行を押し切ったものです。
今回の判決で最も納得がいかないのは、「対面販売とネット販売を比べると情報提供の難易、実現可能性に有意な差がある」と断じていることです。
その理由として、例えば、
1. 対面販売では、購入者の年齢、性別、体格、身体上の特徴、顔色、表情、行動、態度やしぐさ、声質や口調を見聞きできるのに対し、インターネット販売ではそれらが困難である、あるいは購入者の申し出の場合は自己申告だからその申告内容の真偽の確認が著しく困難である。
2. 対面販売では、有資格者は名札で表示されているので確認できるが、インターネット販売では応対の相手が本当に有資格者であるか確認できない。
3. インターネット上で、禁忌事項に関するチェックボックスを設けたところで、それを正しく理解しているかわからない。
4. 対面販売で例え、実際の使用者が購入者以外のものであっても、対面販売であれば、購入者から情報をしっかり聞き取ることができるが、インターネット販売では購入者の自己申告に基づくしかないので、虚偽の申告を見抜けない。
実際のドラッグストアではこのような状況を実現しているでしょうか?
僕は「ポイントカードを持っていますか?」と言われた経験しかありません。
一方で、インターネット上では、ペテン師がうそつきに販売していることを想定しています。
まさに結論ありきの理由付けとしか思えません。
このような不合理な理由で既存の業界を守り、新たな業界の出現を妨げることに、司法までもが荷担するとは驚きを禁じ得ません。
司法が、「インターネット販売は対面販売に較べて情報提供の点で有意に劣る」と認めたことは、Eコマースやインターネットのビジネス全体の根幹を揺るがします。
また、今回、対面販売の優位性を認めたことで、インターネット販売だけでなく、漢方薬や伝統薬の郵送販売も、同様に安全性が劣ることを司法に認められたことになります。

まずパブコメが形だけであるのは本件に限ったことではないのでスルーして。
ネット販売が対面販売に劣る理由が4点ほど示されたとしており「実際の店舗でこうした状況が改善されるか」と疑問を呈されています。
大変耳の痛いところです。
薬剤師の立場でこう言ってしまってはいけないのですが、残念ながらおっしゃる通りだという部分が大きいです。
「白衣着てるから本物の薬剤師か?」「名札付けてるから本物の登録販売者か?」
誰がこれを担保するのでしょう。結局のところ信用してもらうしかないのです。
薬剤師が対面販売するから禁忌や併用注意を漏れなく拾えるか?
こうした作業についてはむしろ、コンピュータが行うネットの方が有利だと思われます。
対面販売だから十分に情報を聴取できるかといえば、代理の人間が買いに来ていて「詳しいことはさっぱり」なんて言われることもしばしば。
というかむしろ、代理の人間が来てたら「対面」してないんだけどね。
一方ケンコーコムがちゃんとやってるかといえば、こんなことやってる会社ですから、何をか言わんをやです。
また、漢方薬は商品選択の際に四診に基づいて証を決定するのが本来ですので、漢方薬の郵送販売は当然に対面販売に劣るということは明言しておきます。


さて私の私見ですが、そう遠くない将来にネット販売は解禁されるでしょう。
ただしその場合、利用者自身が負う責任というものが当然のこととして現在より重くなることは間違いありません。
ネットで購入するときに次々聞かれる禁忌事項etc.etc.をしっかり読まなかったら、当たり前のことながら購入者の責任です。
それなのに日本人のメンタリティは、そういう自己責任というものに欠けると思っています。
服薬指導していてよく言われるセリフに「医者に任せているから詳しいことは分からん」というものがあります。
それもごく一部の適当な人というわけではなく、相当数そういう方がいます。
基本的に日本人は「専門家の先生に任せておけばいい、素人には難しいことはよく分からん」という民族なのだと思っています。
そういう民族に対して、自己責任の大きくなるネット販売は「一律に禁止すべきではない」と思いますが「決して薦めたくはない」とも思っています。
「制度としては存在してもいい、ただし利用する人はそれなりに勉強してね」です。
薬を飲むだけなら幼稚園児でも出来ますが、大事なのは「症状にあった薬」を「適当な用法用量」で飲むことであり、このときの「適当な用法用量」には当然副作用や相互作用に対する対処も含みます。
この「症状にあった薬」を医師や薬剤師ではなく、患者自身が選ばなければいけないのが「ネット購入」であり、症状や体格・併用薬に応じた「適当な用法用量」も患者自身で判断しなければいけないのが「ネット購入」だということを認識しないといけません。


2chに素晴らしい言葉がありますのでネット販売まんせーの人はよく心に刻んでおいてください。
「嘘を嘘と見抜けない人は掲示板を使うのは難しい」