毛生え薬の勉強会

GSKさんにお願いして今月の薬審通過予定のアボルブのお勉強会。
アボルブは1型および2型5α還元酵素阻害によってジヒドロテステステロン(DHT)を減少させることによる前立腺肥大症(BPH)治療剤。
これまでのハルナールやユリーフといったα1ブロッカーでは交感神経の緊張を緩和して尿道平滑筋を弛緩させるだけだったのが、アボルブでは前立腺そのものを縮小してBPHを改善する。
ブロスタール等の抗アンドロゲン剤と異なり、5α還元酵素に選択的に作用するためLH−RHやLHを介した中枢性のSEを発現しない。
MRさんは「BPH治療剤初の根治療法です」と言っていたが、服用を中止すると再びBPH進行が再開するため、厳密には根治療法ではありえない。*1
アボルブは服用開始2週でDHT濃度を9割減少させるが、効果発現にはプロペシア*2同様に3〜6ヶ月を要する。
この点では3wで効果を発現するα1ブロッカーに及ばないが、そのα1ブロッカーを併用することで問題は解決する。
α1ブロッカー及びアボルブ単剤では3wで効果が頭打ちになるα1ブロッカーを15wあたりでアボルブが逆転する。
これらを併用した場合相加的な効果を得られるようなので、即効性・遅効性という問題を差し引いても両者の併用には価値があるようだ。

  • 製剤データ

¥206.5/Cap*3
原末の性質が錠剤化に不向きなようで、将来にわたって錠剤化する予定はないとのこと。
同様の理由で軟カプセルでの発売となっており、ODPは△
1Cap/day、1×服用で増減なし。
食事の影響は受けないため、1×ならいつ服用してもOK。
隔日用法等はデータなし。
CYP3A4による代謝を受け、重度の肝機能障害患者には禁忌。CYP3A4阻害剤とは併用注意。
WF、ジゴキシン等との間に相互作用がなかったとのことなのでP糖蛋白には影響しない模様。
主な副作用は勃起不全、リビドー減退、女性化乳房等(各2〜3%)男性ホルモン抑制によるもの。この辺りはいたしかたないか。


いつ飲んでもよくて、既存薬と比べて副作用もほとんどなく、相互作用もほとんど問題にならないということで、大変よい特性を持っているのではないでしょうか。
既存薬と相加的な効果を示すというのも既存薬とシェア争いの必要がないため今後伸びてくるのは間違いないと思われます。
長期投薬解除*4間際には在庫量に注意が必要かと。

*1:これはopeをしたとしても同じであり、そういう意味ではBPHは未だに「不治の病」であると言える。

*2:選択的2型5α還元酵素阻害剤。毛生え薬。アボルブで増毛作用を発現させようとすると承認用量の5倍量を服用する必要があるとのこと。当然保険ではねられますよ。ついでに副作用のリスクも大きくなりますよ(゚∀゚)b

*3:ハルナールD(0.2)=¥170.3/T、ユリーフ(4)=¥98.1/Tで、1日薬価ではこれらの最大用量と比べて1〜2割増しといったところ。

*4:今年10月