世界がキューバ医療を手本にするわけ

今年6冊目。

世界がキューバ医療を手本にするわけ

世界がキューバ医療を手本にするわけ

これ読んでると「日本ってほんとに米国に操作されてるなぁ」と思う。
著者自身もエピローグで「キューバカストロの独裁国ではなかったか。こいつは、いったいどこの回し者だ」と批判されそうだと書いているくらいオイラの知らないキューバ医療がギッシリ書かれている。
読んでいるとこれこそまさに日本の医療が目指すべきところだと思う箇所が何点もある。
例えばキューバのファミリードクター制度。
これはまもなく日本に導入される総合医制度及び高齢者のかかりつけ医制度の理想として掲げられている社会そのものであろう。
また、例えばキューバのヘンリー・リーブ国際救助隊。
数年前まで日本の低コストハイパフォーマンス医療を支えていた医師たちは、労働基準法を完全に無視した勤務シフトにあっても自分たちが日本の医療を支えているんだという誇りと、彼らに向けられる患者、あるいは患者の家族からの感謝と尊敬のまなざしを心の支えとして誇りをもって働いていた。
近年、その患者サイドからの感謝のまなざしは薄れ、無茶な訴訟が頻発するようになっていることこそ医療崩壊の一番の原因だと思われるのだが、このヘンリー・リーブ国際救助隊のような活動は、勤務条件こそ過酷であれ、そうした医師の尊厳を満たすことのできる場所であるのかもしれないと感じてしまう。
その他にも革新的な医療制度は数多く記述されているのだが、そうした先進国をはるかにしのぐキューバ医療の進展っぷりに、本書を一体どこまで信じていいものやら分からなくなってしまうため、別の著者がキューバについて書いた良書があれば読んでみたいと思わされる。


過去の日本人の気質であれば、資本主義と社会主義の理想的な融合も可能だったのかもしれないと思えたんだが、資本主義にかぶれすぎてしまった現代日本においては難しいことなんだろうなぁ。