>かわこ

nohmin2007-06-15

長くなりそうだったので日記本文でレス。


ソースが本というのは結構危険です。
Dr.にも某浜先生をはじめとして色々なDr.がいらっしゃるんで、少数の方が書いている本及びネット情報だけを見て鵜呑みにはできません。
これは健康情報、あるいは政治、宗教絡みの本ではみんな共通の事項だと思われます。
一見すると理屈が通っているように見える説であっても、それは机上の理論に過ぎないかもしれないし、もっと言えば理屈が通っているように見えて通っていないかもしれない。
この辺を判断するのにはやはりそれ相応の知識も必要とされてきます。
きつい言い方をすると「書籍情報ってのは、かなり批判的に読まないと洗脳されやすい」ということです。


さてご質問の否定材料なんですが、これはオイラにパッと浮かんだ疑問点であって反証があるわけではないのですが参考までに。
一昨日のコメント欄にレスした通り、オイラも「牛乳」と「骨粗鬆症」で何件かググってみたわけですが、牛乳が骨粗鬆症を惹起すると主張する皆さんのおっしゃる主な理屈としては以下の通りになります。

牛乳にはCaも多く含まれているが蛋白質も豊富に含まれている。
さらに、それらの蛋白質には硫黄成分を含むものが多く、体内で代謝されるにあたって硫酸イオンを形成するため体内が酸性に傾く。
酸性に傾いた体液を中和するための材料として体内のCaが消費される。
また、日本人は乳糖を分解する酵素が少ないために牛乳のCaを十分に吸収することができない。
以上のことを差し引きすると、牛乳を飲むことでCaは結局マイナスになってしまい、骨粗鬆症を助長することになる。

さて、これどうなんでしょう。
米国人は日本人よりも牛乳摂取量が多いのに骨粗鬆症の有病率が高いそうです。
また、牛乳をたくさん飲む米国人はそうでない米国人と比べて骨粗鬆症の有病率が高いというデータも見かけた気がします。
でも、どっちも米国人なんですよね。
日本人とは色々なところが異なるので、その結果を直接日本人に当てはめることができるとは限りません。
薬の臨床試験でも、海外で何万人ものデータがあっても日本人を対象とした試験が求められるのはそのためです。


さてまずは、牛乳以外のリスクファクターは揃ってるんでしょうか?
例えば牛乳をたくさん飲むってのは、おそらくパン食がメインとなると思うんですが、牛乳の摂取量が少ない人と比べて食生活はどう変わってくるんでしょうか。
魚の摂取量は?肉の摂取量は?つまり牛乳以外の因子によるCaと蛋白質の摂取量の差は補正されてるのか?
牛乳には便秘を抑制する働きがあると思いますが、その摂取量の差から生じてくる基礎疾患の違いは?すなわち骨粗鬆症以外の疾病に差はなかったのか?
というのは、バックボーンにある疾患が変わってくれば、当然Caの代謝条件が変わってくるし、基礎疾患の治療に例えばステロイドを用いたとすると、これの副作用で骨量が減少したりします。
また、基礎疾患の条件が変わってくれば当然平均余命も変わるわけで、そうすると人口構成比が変わってきます。
骨粗鬆症というのは高齢になれば自然発症する割合も上がってくるんで、人口構成比が変わったらその辺を補正しないといけません。


次に体液の酸性化についてですが「蛋白を摂ると体液が酸性化する」が事実だとしても、それは「体液を酸性化させないためには蛋白を控えるべきだ」とイコールにはなりません。
蛋白質を摂って体液が酸性化してしまった分は、体液をアルカリ化させるものを採ることで相殺できるからです。
体液をアルカリ化させるものをいくつか挙げてみましょう。
ヒジキ、わかめ、昆布、干ししいたけ、大豆、ほうれん草、ごぼう、さつま芋、にんじん、バナナ、里芋、キャベツ、メロン、大根…
乱暴にくくってしまえば海草や食物繊維を摂ればいいわけです。
この辺って、洋食よりも和食に多いものじゃないですか?
事実、洋食文化では和食文化に比べて痛風の発症率がグンと上がります。
すなわち、牛乳を飲むことで多少蛋白質の摂取量が上がったところで、日本人では米国人よりも蛋白の悪影響を相殺しやすい環境にあるということです。
また日本人は米国人と比べてCa摂取量が少ないため、牛乳を飲むことによるCa摂取量増大はむしろプラスに働く可能性が高く思えます。


細かく挙げればまだ色々突っ込みどころはあると思いますが、大きな点としては以上2点が、オイラが「牛乳は骨粗鬆症を助長する」説をにわかには信じがたい理由になります。
要するにオイラ達の業界から言わせてもらえば「牛乳と骨粗鬆症の関係は、データが無いからはっきりしません」が一番正確なんですわ。
最近の健康情報ってのは、先日の「あるある」の例を挙げるまでもなく詐欺まがいの低レベルなものがほとんどなんで、あまり鵜呑みにしないほうがいいよー。