タミフルのフォロー

こういうニュースが出るといつも心配するのは「なんて怖い薬だ!もう絶対飲めない」とか言い出す人々があちこちに沸いて出ること。
とりあえず簡単にフォローさせていただきます。
タミフルの年間生産量は1500万人分。
この8割を日本が輸入している*1ため日本での年間販売量は1200万人分。
これが2001年から販売されているために現在までに4年間、すなわちざっと数えて、のべ4000万人くらいが飲んでいることになる。
このうちの8人*2といったら統計的にはかなりの低確率になる。
したがってこのニュースだけ見て単純に「そんなに死んでるのか!」とは捉えないでほしい。
また間違っても「幻覚が出るなんて麻薬みたいね!ちょっと飲んでトリップしてみようかしら」などと勘違いしないように。


なお、タミフルを飲んだときに、幻覚だけに限らず副作用が出る確率は成人の場合でおよそ4人に1人で、内訳としては腹痛(6.8%)、下痢(5.5%)、嘔気(3.9%)が報告されている。
小児(1〜12歳)の場合はおよそ2人に1人が副作用を訴え、嘔気(24.3%)、下痢(20.0%)となっている。
ただしこれらの症状はインフルエンザ自体からも出てくるため、タミフルのせいであるかどうかは判断できない点を踏まえて読み取ってくださいな。


また、他のインフルエンザ治療薬はどうかというと、現在日本で承認されているのはタミフルのほかにシンメトレルリレンザがあります。
シンメトレルにはタミフルと同じく幻覚、妄想(頻度不明)との記載がある上に、タミフルとは違ってA型インフルエンザにしか効きません。
一方リレンザには幻覚の記載がなく、A型B型両方に効くのですが、こいつは錠剤ではなく吸入剤なんですね。
従ってきちんと吸入するための手技を習得する必要があるということと、もうひとつの問題点はあまりにもタミフルがメジャーになりすぎてリレンザの採用が減ってしまったため、病院、薬局にリレンザの在庫があまりないと思われます。
リレンザのような抗インフルエンザ薬というのは予防的にもらうものではなく、症状が出てから処方してもらうものですから、病院を受診したらすぐに使いたい類の薬です。
さらに、発症後2日以内に飲み始めなければ効果が薄いため「今在庫切らしてますから2日待ってください」では使い物にならないのです。
以上の点からも、今回の報道があったからといってタミフルが他のインフルエンザ治療薬と比べて使いづらいということにはならないと思われます。

*1:この割合は異常だが。

*2:しかもその8人はタミフルによる副作用だと断言はできない。