ビ・シフロール

パーキンソン病(以下PD)は安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射神経障害を主症状とし、緩除に運動神経障害が進行する神経変性疾患である。
黒質線条体系のドパミン神経細胞が変性・脱落しており、そのために線条体でのドパミン系機能が低下し、アセチルコリン系の機能が相対的に優位となる。
この神経機能のアンバランスの是正、ドパミンの補充がPDの薬物治療方針となる。


PD治療薬にはレボドパ/DCI合剤*1ドパミンアゴニスト*2、MAO−B阻害薬*3ドパミン放出促進薬*4、抗コリン薬*5ノルアドレナリン補充薬*6などがあり、ビ・シフロールなどのドパミンアゴニストはドパミン神経のシナプス前の機能に関係なくシナプス後膜のD2受容体に直接作用することによりPDの運動症状改善作用を発現するといわれている。
ドパミンアゴニストの利点は、半減期が長いためwearing-off現象をはじめとする症状動揺改善効果があること、レボドパとの相乗効果が得られるためレボドパの投与量を減らすことができ、ジスキネジアなどレボドパの副作用を軽減できることにある。


初期治療にレボドパではなくドパミンアゴニストを選択した場合、レボドパに比べてPD症状改善効果は劣るが運動合併症の発生率は低かったとの結果が得られている。
さらに、ビ・シフロールは臨床的に振戦に対する有効性が高いとの報告がある。


ビ・シフロールは肝臓での代謝を受けず、そのほとんどが未変化体のまま尿中に排泄される上に透析除去率も9%と低いため、腎機能低下患者では慎重に投与する。
また、PD患者には高齢者が多く加齢による腎機能低下が考えられるため、副作用発現などのチェックが重要となる。


ビ・シフロールの副作用としては幻覚*7や悪心・嘔吐、立ちくらみ*8などが報告されており、投与初期に発現する頻度が高いためビ・シフロール開始時には漸増法による投与が推奨されている。
また、ビ・シフロールには突発的睡眠の副作用の発現可能性があり、本剤服用中には自動車の運転などはさせないよう注意すること、との警告が出されている。
服用忘れや過量服用、急激な服薬の中断により悪性症候群が起こることがあるため、患者が自己判断で服薬調整を行わないよう指導する必要がある。

*1:メネシット、マドパーなど

*2:パーロデル、ペルマックス、カバサール、ビ・シフロールなど

*3:FP

*4:シンメトレルなど

*5:アーテンアキネトンなど

*6:ドプスなど

*7:国内臨床試験での発現率15.43%と高率で、そのほとんどは幻視

*8:こちらは少ない